細井研究室

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遊びの現象学
西村清和(著)/勁草書房/1989年

遊びという現象にはこれまで、”労働”と対比されることで、気分転換を図る”余暇”としての役割や、”美や芸術”と結びつくことで、美的判断を生む”自由な創造性”としての役割が与えられてきた。遊びは、現実や日常から分離され、非現実・非日常の仮象となり、また、現実の社会生活の模型として、子供たちが社会に出るための準備、模擬学習の場として捉えられるようになった。つまり、遊びという現象が労働と共に主題的に発見されて以来、遊びには様々な意味や役割が与えられてきた。そして、それは学問の世界でも同じであり、教育学、生物学、心理・生理学、ホイジンガに代表される文化人類学やカイヨワの社会学など、様々な学問分野が「ひとは、なぜ遊ぶのか?」「遊びとはなにか?」という問いに対して、様々な解釈を行ってきた。

 

本著は、そのような社会、学問領域において、これまで遊びに与えられてきた意味や役割を総括するとともに、従来の遊戯論が遊びの現象そのものを、現実の自然や社会、文化のコンテクストに還元してしまうことで、とりにがしてしまっている、遊びが持つ独自の構造、独特の現象様態を見極めることをその目的として書かれたものである。

遊びに見られる個々の行動や現象そのものを、教育学や心理学の常套句ではなく、ことがらに対応した哲学の言葉で記述することを試みているので、読解には苦労するが、遊びを浮遊と同調を生む遊隙と遊動と呼ぶ構造に還元する視点は新鮮であり、読みごたえがある。

 

また、これまでの遊びに対する研究を総括する第一章は、これから遊びを学術的に調べてみたいと考えている人のみならず、自分たちの遊びに対するイメージを問いなおすという意味で様々な人に読んでいただきたいと思う。

 

 

 

(文責:豊川)

 

 

 

 

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