マンガ研究会報告会のレポート
講師 精華大学教授 牧野 圭一教授他
【岡崎】

 1999年10月29日、立命館大学アートリサーチセンターで「ネットワーク社会における文化・芸術の展望〜いま、なぜデジタル・アーカイブか〜」というテーマの講演会が開催されました。講師は、東京大学大学院新領域創成科学研究科助教授の武邑光裕氏。文化そしてアーカイブを通して、ネットワーク社会の現在と未来をwebやビデオを織り交ぜながら語って下さいました。

■精華大学牧野圭一教授の報告

 精華大学で、デザイン学科のマンガ科を教えておられる牧野教授は、マンガ家でもあり長年マンガ業界の現場に携わっておられました。
 そういった現場からの視点を中心に、一般の人からは見えにくいマンガ業界の報告や問題点をあげられました。とくに重要なもの、緊急問題を次の6つに分けて報告が行われました。

■マンガの読み解きの文法

 まず、マンガの読み解きのための文法についてお話がありました。
 ストーリーマンガではすでにマンガの文法とも言えるものが何人かの研究者によってなされていますが、一コママンガ、すなわちカーツーンにおいてはまだ全くの手付かずの状態です。牧野教授御本人も一コママンガを描かれていたこともあり、一枚の絵の中にアイデアが集約されている
と考えると「ストーリーマンガ」よりもさらに深い法則があるのかも知れない、と指摘されました。

■マンガのデータベース化、マンガ検定

 読み解きの文法を踏まえてのマンガのデータベース化、「マンガ検定」への試みの報告がありました。  まず「マンガ検定」とは、漢字検定、漢字の意味を読み取る検定があるのなら、同様にマンガの意味を読み取る「マンガ検定」も、マンガ文法の研究が進めば可能ではないかとお考えでした。また、大量のマンガ作品を整理してのマンガのデータベース化は「アイデア、発想法の世界百科辞典」となるに違いないという御意見もその中にありました。

■インターネット上のシンジケートと電子透かし技術

 インターネット上のシンジケート、マンガが世界中の人々のユーモアの共有物となりはしないかという提案と、インターネット上に流したイラストレーションやマンガ無断利用の防止のための「電子透かし」技術の紹介がありました。
 「電子透かし」という技術は、費用を払わないで作品をインストールすると画像が乱れて使い物にならなくなるという技術です。その技術を利用して世界に作品を配信しても、ビジネスとして成立するのではないかという報告がされました。
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