デジタルアーカイブ・ビッグバン京都'98
セッション氈@『デジタルアーカイブ国際会議'98京都』
【山根】

■デジタルミュージアム2000展

 1998年12月8日、「デジタルアーカイブ国際会議'98京都」と銘打たれたこのイベントは、デジタルアーカイブの具体的な活用促進を目的に行われたものです。

 有形無形の文化資産が集積し、世界的にも「千年の古都」として名高い京都ならではのデジタルアーカイブ事業への提言が多数ありました。
 最初に行われたのは裏千家家元である千宗室氏の招待講演「茶の心 平和のこころ」です。
 氏は特に文化財関係のデジタルアーカイブに対して、データ収集のみに力を注ぐのではなくそれを受け継いでいく人(人材)の大切さや、現在の文化財の保存状況の貧弱さを挙げて、形(データ)の保存ばかりが先行するアーカイブ化の現状に苦言を呈しておられました。

 次に行われたのは3件の「デジタルアーカイブ先導事例プレゼンテーション」です。

 一つ目は龍谷大学の岡田至弘教授による「本願寺書院のデジタルアーカイブ化プロジェクト」の中間レポートでした。
 絢爛豪華な襖絵を始めとする本願寺書院の美術品を単にデジカメで録画するのではなく、建立された当時の美術様式まで考えて立体的にアーカイブするための苦労話や、多
バンド撮影したデジタルデータを加工して、風雪によって失われた美術品の色彩を復元するといったデジタル技術ならではの可能性を感じさせる内容でした。

 次の発表は京都造形芸術大学メディア美学研究センター所長の武邑光裕(たけむらみつひろ)氏による「最後の浮世絵師「豊原国周」の華麗なる世界」という作品の紹介と、これからの美術品のデジタルアーカイブについて、どうすればデジタルの情報(映像等)を使って実在の美術館のような鑑賞体験をさせることが出来るか等のお話でした。

 お二人の話を聞いて思ったことは、技術は今後いくらでも向上するであろうし、むしろ技術の使い方(昔の色の復元なんて個人的には奈良の仏像にやってみて欲しいですね)と、データの提示の方法(ユーザーインターフェース)を意識して洗練させないといけないなということです。
 いくら綺麗な映像が見れると言ったってそれだけじゃあすぐに飽きてしまうでしょうから、それでは開かれない美術教科書と同じことになってしまいます。
 その点デジタルアーカイブにはデジタルでしか表現できない要素がまだ眠っているように思います。
 そこで一つの考え方としてテレビゲームのユーザーインターフェースの研究なんていいんじゃないかと、手前みそながら考えてしまいました。

1(次ページへ続く)

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