IMI講義 『ゲームスフィア 〜ゲームの世界を理解するために〜』
講師 マルチメディア研究者・IMI講座ディレクター 野々村文宏氏
【まさゆう】

 1998年 7月25日に、大阪南港のWTCビル21FにあるIMI(インターメディウム研究所)に於いて、GAPでお世話になっている野々村先生の講義を聴いてきましたので、簡単に報告いたします。
 野々村文宏氏はモダンアートから建築、コンピュータ文化など様々な分野に精通しておられ、ゲームに限れば、82年にアスキー出版(当時)が発行した雑誌、アスキー別冊「ログイン」編集部スタッフとしてゲーム黎明期から携わっていた方です。

 今回の講義のタイトルは「ゲームスフィア 〜ゲームの世界を理解するために〜」で、「ゲーム」「遊び」を社会学・コンピュータサイエンス双方の観点で概観されました。
 ちなみに「ゲームスフィア」という耳慣れない言葉は造語で、ゲーム的な価値観を受容する社会という意味です。
 また、ここでいう「ゲーム」とは、コンピュータを用いたゲームだけでなく、広くゲーム性を持った活動全てをしています。

 社会学からのアプローチとしてロジェ=カイヨワ「遊びと人間」を題材として取り上げ、遊びにおける4要素、ミミクリ(模倣)、アゴーン(競争)、アレア(賭け)、イリンクス(めまい)があることの提示と、それぞれについての例示をされました。
 この定義は70年に発表されたものなのですが、今でも当てはまることが多いので、遊びを本質的に解明するとこ
れらの要素が入ってくるのが分かると思います。
 ミミクリは子供がよくやる「ごっこ遊び」、アゴーンはスポーツにおける勝敗、アレアは双六などの偶然性と戦略性を合わせたもの、イリンクスはジェットコースターやブランコ遊びが例として上げられていました。
 「遊び」「ゲーム」は非生産的な活動とみなされがちですが、現在を見てみると、デリバティブといわれるような金融派生商品は非線形数学の応用による取引であり、それは多分にして遊びの要素が採り入れられている訳で、単に生産/非生産という言葉では世の中の価値は語れなくなっている、というテーゼでもあります。
 コンピュータサイエンスからのアプローチとしてはハワード=ラインゴールド「思考のための道具」が上げられていました。
 周知のようにコンピュータは最初、ロケットの弾道計算をするために開発されたものですが、年月を経てそれはコンピュータゲームやインターネット、マルチメディアなど生活を豊かにしてくれるもの、仕事をより快適にすすめる道具としても使われるようになってきました。
 講義では現在のコンピュータアーキテクチュアの基礎であるノイマン型コンピュータの概説や、60年代からのいわゆるライフゲームに言及し、人工生命とはどのようなものか、コンピュータ(機械)は人間の代行を出来るのか、考えることが出来るのかについて触れられました。

1(次ページへ続く)

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